☆小説「日本分断！」

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　この小説は私のオリジナル作品です。元漫画家の私はかつて少年ジャンプ（集英社刊）や少年サンデー（小学館刊）等の新人漫画賞を受賞した輝かしい（？♪）実績があるが漫画も小説も映画も売れるかどうかは脚本次第、ストーリー豊かな発想次第である。この作品を読めばその実力が分かると豪語してみたが、ま、ひまな方は読んでみて下さいネ

　この小説を映画にしたら日本映画の邦画の部門で売り上げ歴代一位になると私は思っているけどどう？。しかし、今では某国のドンが亡くなりややタイムリーさに欠けますが、脚本の著作権料は￥１千万円位は請求したいねェ♪この作品には天文の事は何も出て来ません。また、話は「２００９年９月から」を時代設定にして始まります。

　　　　　　　　（注）この小説はフィクションで人・国・歴史上の事柄は現実とは一切関係ありません


　　　　　　　　　　　　　　小説　「日本分断！」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　原作・佐　野

  ここは、西日本国のＯ県Ｓ市。

　２００９年（平成二十一年）、夏休みも終って日焼けした友人達と中学校に登校している時でした。朝方まで降っていた雨は上がり、総社川を挟んだ山から山にかけて大きな虹がかかっているのが見えます。

　「うわーっ、きれいな虹だワ！」　

　皆で歓声を上げながら叫んでいたその時、いきなり空襲警報のサイレンが鳴り響きました。見ると虹の上を突っ切ってミサイルが東から西に飛んで来るのが見えます。警察管の指示で私達数十人は一番近い防空壕に非難して身を秘そめたけれど爆撃音も何も無く沈黙の後に誰かがつぶやきました。
　
「まただワ！」

「もゥ〜本当に嫌じゃヨ、東は！」　
　
　安堵感と焦燥感が漂う中、皆が地上へと出て来て私達は学校へと急ぎました。私は中学三年生の女の子。名前はユミ。父と兄はサラリーマン、母と私、そしてお婆ちゃんの５人で暮らしています。　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　Ｓ市に住む様になったのは１９９５年（平成七年）からで、それまでお婆ちゃんや両親達は兵庫県神戸市に住んでいたの。でも、阪神大震災で自宅が崩壊、一家は全員助かりましたがそれ以来母の実家のＳ市に移り住む様になったのです。私はＳ市に来てから生まれたワ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　神戸にはお婆ちゃん達は先祖代々住んでいたのでありません。お婆ちゃんのお父さん、つまりユミからすれば曾お爺ちゃんの時代からだけです。

　でも、曾お爺ちゃんはどうして神戸に住むようになったのか、もともとは関東の千葉県に先祖代々生まれ住んでいたのに・・。ユミがまだ幼い頃からお婆ちゃんがその理由を口癖の様にしてくれていました。

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　話しは明治時代にまで遡るワ。

　１９０６年（明治三十九年）の事です。

　日本の隣国、朝鮮国の軍隊が進攻して来て日本全土を占領してしまったのです。この時から日本に、そうして曾お爺ちゃんに悲劇が始まったの。

　わずか十五歳の曾お爺ちゃんは、千葉県から同郷の若者達と一緒に神戸まで占領軍により強制的に連れて来られ港で船舶の荷物の積み下ろしや過酷な作業をさせられたそうです。

　東北地方から連れて来られた若者達もその後朝鮮国の本国に連れて行かれたり、中国大陸の奥へ連れて行かれたりして悲惨な作業をしいられ、まるで奴隷の様に亡国の苦難を味わい続けたと言います。

　日本は圧倒的な軍事力に勝る朝鮮国に完全に支配されてしまったのです。
　不幸は更に続いたワ。

　日本国内でその後内戦が勃発、曾お爺ちゃん達は生まれ故郷の千葉県にはもう全く帰れなくなってしまったのです。なぜなら日本は２つに分断され体制の違う敵国同士になってしまったから。

　分断された軍事境界線では非武装の休戦ラインを挟んで今でもお互いにらんだ状態が続いています。

　ユミは、この様な経緯を知る度にとても悲しい気持ちで一杯。だって、同じ日本人でありながら国が分断され幾度となく衝突や戦争を繰り返して来ているからです。


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　あれから・・分断されてから五十六年間経ちました。

　今、ユミの住んでいる西日本国は首都を大阪として今日まで資本主義経済のもとにアメリカや世界と親しく経済的にも発展して来ました。

　もう一方の東日本国は、私達は通称「東」と呼んでいるけど首都を東京として一党独裁政権で中国やロシアと親しい関係を続けています。現在は二代目の近総書記の政権が続いているけど最近健康に問題があるのか三代目の世襲の事がマスコミで報道されたりしているみたい。

　東は、かなり経済が疲弊し行き詰まっている様で今までにも大勢の人達が休戦ラインを乗り越えてユミのいる西日本国に逃げて来たりしています。

　このような人達は脱東者と言って身柄を確保し関西の近隣県に集めて住んでもらい、西の自由主義の社会生活になじむ様に勉強をしているそうです。

　一つの国が二つに分断された悲劇は過去にヨーロッパでもあったと聞きました。東ドイツと西ドイツのように。

　アジアの、この極東地域で、日本が分断の悲劇にさせられたのはお婆あちゃんがいつも隣国の朝鮮国のせいだヨと言っているのです。
　幼い頃、ユミにはそれが理解出来なかったけれど最近歴史の勉強で次第に分かって来たワ。


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　日本は、昔から中国大陸の文化を朝鮮半島から経由して来ました。

　だから朝鮮国との付き合いは古く、朝鮮使節団が我が国の歴史に度々登場している事も勉強しました。

　ところが、国や民族も人の集まりで人間誰しもそうであるように考える事は同じだったのネ。中国大陸の高度な文化を朝鮮国はそのまま日本に伝える事はしなかったのです。

　意識して文化の程度を少しづつ落して伝えていたみたいで長い年月ではこの差が大きくなったのは言うまでもありません。江戸時代の徳川三百年に渡る期間では、文化の差、技術の差、軍事力の差において日本は朝鮮国に比べ完全に劣るものになっていました。

　明治時代になり、更に高度な西洋の文化を取り入れた朝鮮国は、満を持して極東アジアの地域において恐ろしいかな平和の歴史に反逆する行為を始めたのです。

　まず手始めに、なんと陸続きの隣国の中国、当時の清国に進攻を開始して１８９４年（明治二十七年）朝清戦争を起こし世界列強国の見守る中で勝利したのです。

　１９０６年（明治三十九年）にはロシアと朝ロ戦争も始め、誰もが予想しなかった勝利を治めロシア領土のサハリンを割譲し破竹の勢いで大陸の奥へと進攻して行きました。

　日本に侵攻して来たのはこの頃です。軍事力に劣る日本は簡単に侵略を許し悲しいかな植民地に。１９１０年（明治四十三年）朝鮮国は悲願だった日本をついに併合、俗に言う「「朝日併合」です。


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　多くの日本の若者達が生まれ故郷から国内の別の地方に連れて行かれたり、朝鮮国に連れて行かれたり、また異国の土地に連れていかれたりして非人道的な扱いや強制労働をさせられました。

　こんな民族的な迫害を受け続ける暴挙に対し、腹に据えかねた一部の日本の若者達もついに反乱を起し朝鮮国の偉い政治家を中国のハルピンで暗殺しましたが焼け石に水。

　軍事力に勝る朝鮮国のごう慢な態度は益々エスカレート。まるで朝鮮国人に非んば人に非ずと言った感じになっていました。

　しかも、極東アジアで朝鮮国を中心とする「大東亜共栄圏」の野望を持ち出したのです。
　大陸への侵略と植民地化を拡大させる為に日本人を兵隊として強制連行し東南アジア方面にも進攻、このため見知らぬ土地で大勢が戦死や病死をしたと言います。

　１９３２年（昭和七年）朝鮮国は、中国の東北部において清朝最後の皇帝を擁立してを「満州国」を建国しました。しかし、世界の列強国を始め国際連盟はこれに反対して承認せずどこの国も認めなかったと言うワ。

　嫌気がさした朝鮮国は国際連盟を脱退、こうして世界を敵に・・。

　当初、中国や日本への侵略戦争として始まったこの大東亜戦争も兵器や工場の石油燃料確保の為、次第に東南アジアから太平洋にも及び太平洋戦争と称される様になり、アメリカとも戦火を交える事になって行ったそうヨ。

　１９４１年（昭和十六年）１２月８日未明、朝鮮国はハワイの真珠湾を奇襲攻撃してアメリカを完全に怒らせてしまい戦火の地域は拡大の一途に。

　しかしー。

　いままで幾度の戦争にも勝利し快進撃を続けて来た朝鮮国は勝利を保証する冷静さを既に失っていました。

　祇園精舎の鐘の声　

　諸行無常の響きあり・・

　盛者必衰の理をあらわす

　おごれる人も久しからず

　ただ春の世の夢のごとし

　たけき者も遂には滅びぬ・・・

　これは日本の十三世紀に詠まれた平家物語の一部です。

　賢者は歴史に学ぶと言いますが、平家物語を生んだ日本人ならこんな過ちはしなかったのにねェ。朝鮮国は平家と同じ運命をたどり始めたの。

　当初、戦況が不利で撤退を繰り返していたアメリカ軍は、豊富な物資と軍事作戦で次第に朝鮮国が支配していた太平洋の島々を奪還、し烈な戦闘で制空権も確保して行きました。

　連日に渡り、爆弾を大量に搭載したアメリカ軍の爆撃機が何百機もの編隊で朝鮮半島まで飛来、主要都市に次々に爆弾を投下、人も街も焼き尽くし焼け野原に変えて行きました。


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　１９４５年（昭和二十年）８月６日、アメリカ軍の爆撃機が真夏の太陽がギラギラと照り付ける朝鮮国の首都ソウル（京城）に世界で初めて新型爆弾を投下しました。
　ウラン型原子爆弾です！

　強烈な閃光と放射線を照射して立ち上がった大きなキノコ雲の下は一瞬のうちに建物が破壊され、街は跡形も無く吹き飛び生きる物全ての時間が停止して数十万人が亡くなりました。

　８月９日、ピョンヤン（平壌）にもアメリカ軍はプルトニウム型原子爆弾を投下。

　炸裂した閃光の空間は真っ白、色の無い世界が数秒間続いた後ゆっくりと色の有る元の世界に戻った時、街は焦土と化して焼け付き灰となり地獄絵図の様相を呈して数万人の焼けた死体は溶けてガレキに埋まり熱風に異臭がよどむのでした。

　強烈な破壊力の新型爆弾にやっと眼が覚めた朝鮮国は、戦勝国が提示したポツダム宣言を受諾、８月１５日、無条件降伏してようやく終戦となったのです。

　アジアから東南アジアや太平洋の地域にまで及んだ戦争はやっと終り、朝鮮国は今まで侵略や植民地化した外国の支配権を放棄しました。


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　日本は三十五年ぶりに朝鮮国から開放されたのです。

　しかし、良かったワと喜ぶのは束の間、歴史は何と言うイタズラをするのでしょうかと言いたくなります！

　戦勝国のアメリカ軍や共産軍の両方が日本列島の南北から進駐してきたのです。

　自由主義と共産主義の思惑が交差する中、アメリカを後ろ盾として１９４８年（昭和二十三年）８月、大阪を首都する西日本国が誕生。９月、ソ連を後ろ盾として東京を首都とする東日本国も誕生しました。

　が、悲劇はまたしても起きたのです。

　１９５０年（昭和二十五年）日本国内で内戦が勃発。

　共産軍が日本列島を北海道から九州まで南下してアメリカ軍を退け撃破したのです。しかし、アメリカ軍も国連軍と称して総力をあげて反撃、九州から北海道まで北上して共産軍を排除しました。

　一進一退を繰り返した１９５３年（昭和二十八年）７月やっと休戦協定に調印。

　日本列島のほぼ中心あたり、新潟県糸魚川市から長野県を通って静岡県掛川市を南北に縦断する東経１３８度線の軍事境界線が非武装の休戦ラインとなり、同じ日本国でありながら体制の違う敵対する国同士になってしまったのです。

　休戦ラインでは、明治時代から延長されてきた東海道本線も静岡県で分断されたままで現在に至っています。新幹線も九州から大阪や名古屋を経て静岡までで止まっているけど、もちろん、東には新幹線の様な乗り物はまだ出来ていません。

　それどころか、首都の東京は高いビルも多く有りますが、それ以外の地方に行けば電柱より高い建物は見当たらないほど経済は遅れているそうです。


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　分断されたこの五十六年間、同じ民族同士で何回の衝突や戦争を繰り返して来たでしょうか！残念な事に曾お爺ちゃんはこの時の東との衝突で戦死しました。

　生前、曾お爺ちゃんは戦争の愚かさと意義についていつもお婆ちゃんに言っていた言葉があります。それは日本が植民地にされいてた時代、朝鮮国の兵隊達が自慢げに言っていたそう。

　「俺は朝清戦争や朝ロ戦争で勝って国から沢山の勲章をもらった♪」

　「他国を侵略して勝利すれば国から表彰をされ英雄になれる♪」

　・・・なんと愚かな発想かと！勲章とは、自分の国が侵略された時に命を賭けて戦った人に与えるもので、他国を侵略したドロボウに与える勲章など無いと曾おじいちゃんは言っていたけど本当にそうよネ。

　今、東から聞えて来る情報では市民の生活状態は年々悪化し地方では食料不足で数万人が毎年餓死しているとも言われています。それなのに軍事には国の予算の殆どを投入して兵器を開発、ミサイルやロケットを打ち上げ実験しています。

　射程距離５００Ｋｍのミサイル・大雪山一号や、射程５０００Ｋｍのミサイル・陸奥二号、射程２万Ｋｍのアメリカ大陸まで届く大陸間弾道弾（富士山一号）も完成させて、最近では６カ国協議の声明や非難も無視してこれらのミサイルに載せる核兵器の開発にも成功したと吹聴しています。

　　西に住むユミには、国民を犠牲にしてまで軍事費に注ぎ込む独裁政権にはとうてい理解出来ません。

　時々飛んで来る東からのミサイルも、非武装の休戦ラインを超えて能登半島の日本海から朝鮮国に向けて飛ばしたり、四国沖の太平洋に向けて飛ばしたり、本州の上空を九州に向けて飛ばしたりと本当に困ったものヨ。

　しかし、東の言い訳はいつも同じ言葉だワ。

　「ミサイル実験なので海上に抜ければ空中で自動的に爆破して消滅させるので決して西を攻撃目標にしているのではない」と、言っていますが冗談じゃあ有りません！

　でも内心、攻撃目標は本当にアメリカや、かつて侵略され植民地にされた朝鮮国のようにも思います。特にアメリカとは対等に交渉する為の手段としての挑発行為ではないかと容易に想像は出来るのだけど・・。

　だからと言ってユミにはこんなミサイルなんて納得出来るのもでも許せるものでも有りません。

　東は、更に罪深い非人道的な事もして来ているワ。過去に何度か日本海を渡り、敗戦後の朝鮮国に無断で上陸侵入して何十人、何百人も拉致して東に連れ帰ったりしているの。

　陸続きである西にも、長野県の山々や海岸線からも無断で侵入して来て多くの同胞を拉致すると言う犯罪も繰り返して来ているからです。

　最近、この拉致問題が国際的に感心がもたれ、世界各国が開放を要求し抗議しても東は知らないとか、もう解決済み済の事とか確定する人物はもう死んだとか言って取合おうともしません。

　　こんな許せない東ですが時々思うのです、ユミは望んでいるのです、わずかな希望を持っているのです。将来、統一して自由に行き来出来る日が来る事を。

　曾お爺ちゃんの故郷の千葉県に旅行したり、また、東北地方や北海道の人達がこちらに来たり出来る平和な日が来る事を。

　東西両ドイツだって冷戦が終結して統一したじゃあないの。それが何故私達には出来ないの、日本人には何故出来ないのヨ。悔しいったらありゃしないワ！

　あれから１カ月間、空襲警報は１回鳴りました。もちろん、いつもの様に被害は何も有りませんが・・。


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　２００９年まもなく十月、季節は秋に移ろうとしています。

　しばらくは快晴の青空が続く日なのになぜか今日は朝からドンヨリと曇り空。

　また、ミサイルでも飛んで来るのかナと嫌な予感が漂う中、グランドで運動会の練習をしている時でした。

　いきなり、ゴォーと重低音の音が聞えて来たと同時にグラグラと足元が揺れて陸上競技場のトラックが波打っているのが分かります。

　「ああ地震だ！」

誰かが叫びました。

　皆、悲鳴を上げながらグランドに立ち止まったままでいます。木立や電線が揺れていますが、その揺れも次第に収まり周囲を見渡しても校舎や民家は何事も無く練習は予定通り続き午前中の授業は終りました。

　昼食後、教室で皆で楽しく雑談している時、担任の先生が慌てて教室に。

　「皆んな、よく聞け！先ほどの地震だけど西はほとんど被害は無かったが、東の東京付近がスゴイ事になっているらしい！ほとんどの建物が倒壊して多くの犠牲者が出ているそうだ！」

　いくら嫌な東の事とは言え、クラスの皆は不安そうな顔つきで眼を見合わせたりしています。

　その日、学校が終ると皆んな家路へと急ぎました。


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　家ではテレビが東の地震の様子を情報量の少ないにも関わらず東京湾を震源地とするＭ（マグニチュード）９.５の大地震が起こった事を伝えています。

　一週間、二週間と経つにつれ被害の状態はますます拡大の一途。当時、地震の揺れで房総半島の千葉県や東京湾や神奈川県一帯が高さ５０ｍの津波で水没したとの報道も。

　曾お爺ちゃんの生まれた千葉県にも大変な被害が！

　世界各国の国際ニュースは東の国家の存亡すら左右するところまでの事態だと伝えています。

　地震で倒壊した家屋の下敷きになったり、津波に襲われた死体の数々は数千人数万人と日を追うごとに増えて来てもはや救助活動は頻発する余震が妨げて家屋は倒壊を繰り返し、二次三次災害が発生して思う様にはかどりません。

　父や母、そして兄やお婆あちゃんも心配顔で東からのニュースを見ているけどどうする事も出来ないワ・・。

　２００９年１０月中旬。

　壊滅的で悲惨な情報が入る度に新聞やラジオやテレビが東の同胞達を見捨てる事は出来ない、助けようじゃあないかと言い出しました。

　その声はドンドン増えて行き、ついに西日本国の大統領は大阪府の大統領官邸で演説を行い東を皆で助けよう救助に立ち上がろう！とテレビを通じて叫びました。

　これに共鳴した多くの西の市民が東京方面へと向かって行き出したのです。



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　東経１３８度線の鉄条網で仕切られた新潟県や長野県、静岡県の非武装地帯の休戦ラインを大勢の市民が車や自転車や歩いて行列をなして検問所を突破し出したのです。

　小雨が降り始めた休戦ラインの軍事境界線にはズラリと配置した東の兵士達がいっせいに濡れた銃口を向け出しました。

　隊長の指示があれば兵士達の機関銃の引き金はいつでも引けます。西の市民はドンドンと近づいて来ます。

　ヘルメットの奥で目だけがギラリと光る黒い顔の隊長の手が上がり大声でついに撃ての命令が下りました！兵士達は照準を。

　しかしー。

　兵士達は誰も引き金を引きません。

　それどころか、一人の兵士が手にした機関銃を足元に置きヘルメットを脱ぎ捨て小雨の中を走って西の市民達を迎えに行ったのです。その兵士は西の市民達と手を取り合って抱き合っています。

　すると、それを見ていた別の兵士も一人また一人と銃を置いて西の市民を迎えに走り出しました。

　その数はドンドン増えて行き、雨粒で光る鉄条網の向こうのあちこちで東西の両国民が握手したり抱き合ったりしています。隊長の命令を聞く兵士は誰もいません。

　まるで２０年前のドイツでベルリンの壁が崩壊、東西両ドイツの自由になった大勢の市民達が喜び合う光景と重なります。

　一人取り残され自分が発した命令を無視された隊長は、無言で小雨の止み始めた荒地を歩きながら水溜りの前で立ち止まりました。

　足元の水溜りには虹が映っており空を見上げると両国を結ぶ掛け橋のような鮮やかな虹が。それを隊長は最初、眼光鋭くギラリとした目で見ていたが次第に細くなりやがて目を閉じ、沈黙の後・・。

　再び目を開けた隊長は振り向きざまに東の兵士達と西の市民達が抱き合っている中についに最後になって両手を広げて走って行き合流しました。
　日本を二つに分け隔てていた軍事境界線の休戦ラインは今消滅したのです。


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　ユミの家からは父と兄が東京に向かい救助活動に参加しています。その一部終始は私の携帯電話に毎日メールで入っており母やお婆あちゃんを安心させています。

　しかし、不安な情報もありました。

　東には核施設が数カ所も有り、地震で破壊された施設から放射能洩れなどが心配されたのですが、そんな心配は全くの取り越し苦労だと言う事が判明。核兵器や核施設などは全く存在しなくて核保有国だと言っていたのは真っ赤な嘘だと。

　東がアメリカ政府等と対等に交渉する為に有りもしない粉飾した空威張りの情報を流していただけだと言う事です。

　そう言えば、人工衛星も何回か打ち上げて成功したと吹聴した事があったけど世界のどこの国も衛星の存在を追跡・確認出来ず真っ赤な嘘だったのを思い出すワ♪

　東京大震災から２カ月を過ぎた頃、テレビや新聞のマスコミは歴史的報道を伝え始めました。

　まもなく西と東は統一すると。

　この報道を聞きながらお婆あちゃんは感慨深げに言いました。

「やっと、死ぬまでに父の千葉県の故郷にいく事が出来そうだよ、津波で水没してどうなっているのかねェ・・心配だヨ」

　そんなお婆ちゃんの心配顔をよそに、ユミは手作りの勲章を二つ作り始めました。数日間かけてやっと完成させた頃、父と兄が東京での救助活動を無事に終えて我が家に。

　東西の統一をするかも知れないと言う歴史的瞬間のお手伝いをして帰って来た父と兄に、ユミは手作りの勲章を胸に掛けてあげました。

　曾お爺ちゃん、こんな勲章なら良いのでしょう？自国を守りに行った父や兄は英雄だもンネ♪
　喜ぶべき情報がまたも伝わって来ました。

　東は過去に、西の同胞や朝鮮国の人々を拉致して連れ帰っていましたが、その人達全員を開放したのです。

　この開放された人達の中には朝鮮国の東海岸から１９７７年（昭和五三年）、ユミと同じ年頃の当時十三才の可愛い女の子が中学校のクラブ活動の帰りに拉致された女性だったのです。

　その後、東の男性と結婚して子供を産み拉致問題の象徴とされながら、もう死んだと言って無視されていた女性が実は生きていて四十五歳になって無事に帰国。
　両親と感動の再会を果たし今や朝鮮国内では国民を上げて歓喜の祝福騒ぎに沸いているそうです。


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　何事もスンナリとはいかないのが世の中だと子供心のユミにも分かります。

　でも、歴史を変えるにはこんなにも大きな犠牲が必要だったのでしょうか。

　思えば朝鮮国も、日本を長い間侵略し苦しめましたが原爆投下と言う数十万人の痛ましい犠牲で敗戦となりました。

　曾お爺ちゃん達を苦しめた朝鮮国をユミは憎いとは思うけれど、それ以上に憎いのは当時の軍事政権であって朝鮮国の人達を憎むのは止めようと思います。　

　だって、その後の朝鮮国は６０数年間に渡り「戦争放棄」と言う平和憲法を歌い民主主義を確立し、現在では世界第二位の経済大国となりユミの西とも友好関係も深めて来ているものネ。

　難を言えば日本海に有る孤島の竹島の領有権問題で少しもめていますがこれは小さな問題だと思うワ。

　今回、東京大震災では５０万人の犠牲者を出し負傷者や被災者は３００万人を超えました。でも、そのお陰で念願の祖国統一を果たす事が出来ようとしています。私達の悲願がやっと叶おうとしています。

　過去に衝突や戦争を起した憎むべきは罪は、体制の違いであって同胞達に罪を被せようとしてはダメヨ！それよりも同胞達を愛する責任の重大さを未来に向けてひしひしと感じる気持ちの方が強いもの♪

　やがて、道路や鉄道も元の様につながり新幹線も静岡県から東京へ、そうして青森県まで延びるでしょう。


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　晩秋の西日本国の首都大阪市内です。

　今日は朝から快晴、まさに日本晴れとはこの事でしょうか。

　大阪駅の梅田から続くメインストリートの御堂筋は溢れんばかりの人波で一杯。市民の行列はミナミの難波まで続こうとしています。

　黄色く色づいた御堂筋の名物、イチョウ並木は淀屋橋周辺から国会議事堂まで続き風に吹かれ落ち葉となって大統領官邸をも黄色く染めています。

　群衆は西日本国の国旗、東日本国の国旗、両方の国旗を高々と振りながらビルから舞い落ちる紙ふぶきの中を歓喜の気持ちを表しながら官邸前に集まっています。中には関西で人気のあるプロ野球団の黄色の旗やメガホンを振る人も大勢見えていますが何も違和感はありません♪

　上空にはマスコミのヘリコプターが飛び交い、世界各国のテレビカメラが二人の人物を追って大統領官邸から中継を始めました。一人は西日本国の若くて人気のある橋本大統領、もう一人はやや病弱な東日本国の近総書記です。

　今、二人が記帳にサインしガッチリと固い握手をしている場面が写し出され世紀の瞬間が世界に配信されました。

　もう後戻りは許されません。涙声でお婆あちゃんは言いました。

「日本は本当に統一したんだねェ」

　家族皆は感激の涙で一杯です。
　

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　２００９年、師走。

　また木枯らしの季節がやって来ました。

　両手にカバンと傘を持ちながら家を出たのだけど、今日も未明から降っていたみぞれは小雨に変わり寒い一日が始まりそう。

　でも、ユミの心は熱い！

　いや、今や日本人の心は熱い。戦う相手は同じ民族ではなくなったから。戦うのは朝鮮国、そして世界の国々です。と言っても戦争ではありません♪経済でビジネスで堂々と戦うのです。

　その為にもユミもこれから一生懸命勉強しようと思います。頑張るワ！

　将来、何かの縁で東だった所に住む男性と恋をして結婚するかもしれません。だって、もう日本のどこにでも自由にお嫁に行く事が出来るんだモン♪

　巻いたマフラーが北風になびきながらもうミサイルの飛んで来ない平和の朝を満喫しようと傘を持ち上げると雨が止んでいる。

　ふと見ると、清流、総社川を挟んだ山から山にかけて鮮やかな虹がかかり川面にも虹のアーチが逆さまに映っているのが見えます。

　「冬に虹なんて珍しい！」

　友達が叫びました。でも、確かに見えるワ。

　いつか見た虹とは随分違うなァと言いながら学校に向いました。　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（終り）　　　　　　　　　　２００９年１０月　作


　★この小説を読み終わった頃に歌手・天童よしみの曲「珍島物語」が流れて来れば最高の雰囲気になるでしょう♪感想・酷評・くだらない小説ダ！と言った意見等があればメールでお寄せ頂ければ幸いですが・・★
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